認知症の疑いがあると、遺言を作成しても無効になってしまいますか?
1 認知症と遺言能力
認知症が進んでしまうと、遺言能力(有効に遺言書を作成できる能力)が欠けてしまい、有効な遺言が遺せなくなってしまいますので、認知症になる前に、遺言を遺しておくことが最善です。
ただ、いざ遺言を作成しようと思い立ったときには既にご高齢であり、多少認知能力も衰えてしまっている方も、現実には多くいらっしゃいます。
以下では、どの程度の認知症なら大丈夫なのか、実際にどのように作成していくべきかについてお話します。
2 どの程度の認知症までなら大丈夫か
遺言能力は相対的に判断されます。
遺言書の内容の複雑さや、財産の多寡、周囲の人間からどの程度の影響を受けていたのか等により、変わります。
基本的には、遺言書の内容が複雑であればあるほど、財産が多ければ多いほど、高い能力が要求されます。
また、MMSEが20点台前半の軽度認知症程度でも、相続人間の板挟み状態にあり、同居している相続人の影響を受けていたこと等を理由に、認知症もあいまって真意に基づかない遺言であるとして無効になるケースもあり、そのような意味でも、相対的なものです。
3 認知症の疑いがあるが、遺言を遺したい場合にはどうすればよいか
まずは、認知症が進んでいるか、いないのかを判断するために、認知症テスト(長谷川式、MMSE等)を行ってから遺言書を作成することが望ましいです。
参考リンク:一般社団法人日本老年医学会・認知機能の評価法と認知症の診断
そのうえで、どのような遺言書の内容で、どのような方式で作成すべきか、相続に詳しい弁護士に相談してください。
基本的には、認知症が多少進行してしまっている場合には、朝は調子が良い等、時間帯によっても状態が変わることがありますので、比較的調子が良い時間帯に、公証役場の先生に状態を確認いただきつつ公正証書で作成する方が望ましいことが多くあります。
自筆証書遺言は、法務局で保管する制度もできて、以前よりは便利になりましたが、認知症の疑いが残る方が自筆で遺言書の遺すことは推奨できません。
それでも、自筆で遺言を作成される場合には、ビデオで撮影をしつつ、言葉でも遺言を読み上げるなど、相続開始後に相続人が確認をした際、遺言内容を理解しつつ作成したことがわかるようにしておくのが肝要です。
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