節税対策
相続税対策で注意すること
1 相続税の節税対策の方法と注意点の概要
相続税を節税できる方法はいくつかあります。
多くの方が取り組みやすい方法としては、生前贈与の活用、養子縁組、配偶者控除の活用、不動産の活用が挙げられます。
もっとも、これらの方法は、適切に用いないと節税ができなかったり、かえって相続税が高くなってしまうこともあるため、注意が必要です。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2 生前贈与の活用
ご生前に推定相続人に対して贈与をする場合、年間110万円までであれば、贈与税が課されません。
非課税枠の範囲内で生前贈与を行うことで、将来相続の対象となる財産を減らすことができ、相続税を低減することができます。
ただし、相続開始前の一定の期間内になされた贈与については、相続税の計算をする際に、相続財産に含めなければなりません。
具体的には、令和5年までの贈与については相続開始前3年以内、令和6年以降の贈与については相続開始前7年以内に延長されます(令和9年以降の相続から順次遡る期間が延び、令和13年以降の相続からは遡る期間が7年になります)。
そのため、早めに生前贈与を開始する必要があります。
または、令和6年1月1日以降であれば、相続時精算課税制度の適用を受けることで、年間110万円の非課税枠を用いることもできます。
3 養子縁組
養子縁組をすることで、相続税の基礎控除額や生命保険金等の非課税枠が増えるため、相続税を低減できる効果を得ることができます。
ただし、基礎控除額等の計算の際に法定相続人に含められる養子の数には、原則として被相続人に実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人という制限があります。
また、孫を養子にした場合、孫に対して課せられる相続税は2割加算されることにも注意が必要です。
4 配偶者控除の活用
相続によって被相続人の配偶者が取得した財産の額が1億6000万円、または配偶者の法定相続分(相続財産の2分の1)までであれば、配偶者に対する相続税は全額控除されるという特例があります。
仮に相続財産の総額が1億6000万円以下であれば、すべての相続財産を配偶者が取得することで、相続税は0円にもなり得ます。
ただし、配偶者控除の適用を受けるためには、前提として遺産分割協議を終えている必要があり、かつ相続税が0円であっても相続税申告が必要となります。
また、家族構成によっては、配偶者が相続財産を取得した後に発生する二次相続において、かえって相続税が高額になる可能性があるため、事前にシミュレーションをしておくことも大切です。
5 不動産の活用
土地の相続税評価額は、主に路線価または倍率方式によって計算されます。
これらの計算によって求められる土地の相続税評価額は、一般的には市場価格の7~8割とされます。
そのため、現金や預貯金を土地に換えておくことで、相続税評価額を減らすことができます。
また、土地を貸し付けたり、土地の上に建物を建てて貸し付けることで、借地権割合や借家権割合を控除できるため、より相続税評価額を下げることができます。
ただし、不動産を用いた相続税対策が行き過ぎたものであると判断された場合、不動産の評価額を路線価または倍率方式とは異なるものとされる可能性もあるため、注意が必要です。
また、不動産は預貯金と比べると分割、換価しにくい財産でもあるため、遺産分割の際に相続人が揉めてしまうこともありますし、相続税の納税資金に困らないよう、十分な預貯金を用意しておくことも大切です。